2004年9月11日、理化学研究所におきまして「麻布生物系OBの会」が行われました。この会は、生物学関係の職業に携わっている麻布OBの縦の交流が深まるよすがになればとの、中山伊佐男先生の発案により渡辺信元さん('77年卒)が第1回の幹事となって開催されたものです。当日の題目は以下の通りです。
1.中山先生挨拶
2.参加者による自己紹介
中山先生ご講演
3.特別講演1 「末梢神経と血管のクロストーク:神経主導による血管網形成」
向山洋介さん('88年卒)(ハワード・ヒューズ医学研究所・カリフォルニア工科大学)
4.特別講演2 「アメリカと日本のサイエンス、何が同じでどこが違うか−−増殖成長因子の機能解析を通して感じていること」
三品裕司さん('77年卒)(米国立環境衛生科学研究所生殖発生毒性学部門分子発生生物学研究室)
5.会議(今後の活動方針について)
6.懇親会
参加者は、研究者、企業の方、医師、教員、学生など様々で、それぞれの立場からの専門的な話題や、最近の趣味の話題まで、色々なお話を伺うことができました。 研究職の方が多いのは勿論ですが、思ったよりも医療関係の方が少なく、教育関係の方が多いなという印象でした。 自分も学部時代に、高校理科の教員免許を取得した関係で、教職にある諸先輩方のお話は興味深い物でした。 学生は自分を含めて2名の参加でしたが、特に敷居の高い集まりでも無いので、次回以降は学生からも参加者が増えれば面白いと思いました。
会議では今後定期的(1〜2年に1回程度)に集まりを開催することを決め、次回の幹事に野村港二さん('78卒)を選出しました。今後より多くのOBとの交流を期待しておりますので、この集まりに興味をお持ちの方は、次回幹事の野村さん(daucus@sakura.cc.tsukuba.ac.jp)まで御連絡下さい。
詳しい内容については、中山先生、佐野さん('82卒)のレポートを以下に掲載しますので、ご参照下さい。
川島('98卒)
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9月11日午後2時から理化学研究所(和光本所)において、麻布生物系OBの会が開催されました。
たまたまアメリカの研究施設や大学に在任中の三品氏と向山氏が9月上旬に日本に出張のために一時帰国タイミングに合わせて、生命科学分野の研究・教育などに携わっているOBが集まり、お二方の講演を聴こうということになりました。その話が出てから、ひと月足らずのうちに急遽集まりが実現した次第です。これは、’77年卒の渡辺信元氏(理化学研究所抗生物質研究室先任研究員)の尽力に負うところが絶大でした。
当日は、日本動物学会や、自身の主催する会などと重なり残念ながら参加できなかった方もいたのですが、’75年卒から’98年卒に跨って15名の方が出席されました。
向山洋介氏(’88年卒)はカリフォルニア工科大学ハワード・ヒューズ研究所に在籍し、新進気鋭の研究者として活躍中です。
末梢神経主導による動脈系の血管分化や血管網形成の誘導の現象を発見するなどの魅惑的な研究過程をカラー映像なを駆使して分かり易く説明されました。
多くの参加者から熱心な質問が多く寄せられ,その一つ一つに丁寧に説明をしていて、そのやりとりを元教師として心地よく伺っていました。「誘導」については、高校教科書では、未だに1930年代の域をあまり出ていないこととのギャップどう受けとめたらよいのやらとふと頭のなかを過りました。
三品裕司氏(’77年卒)は米国立環境衛生科学研究所(NIH)分子発生生物学研究室のチーフとして多くのスタッフを統括し、輝かしい研究業績を重ねつつあります。
麻布時代・大学時代の話しから始まり、前半では、渡米後の研究の進展の概要を紹介されました。ヒトの疾病の原因を調べるために、ノックアウトマウスなどを用いた増殖成長因子(とくに骨形成因子)の機能解析を進めているということです。ご本人は淡々と話されているのですが、独創的な手法を導入して顕著な学問的な成果を挙げられていることがひしひしと伝わってきました。後半は、日本と比較しながらの、アメリカの大学や研究所の人事の柔軟性、中等教育の実情・大学入試のスタンスの特徴などなど興味深い話し
で、あっという間に時がたちました。
なお、二人の講演に先立って、出席された皆さん一 人 一人も、自己紹介の限られた時間の中で密度の高い内容を凝縮して披露して下さり,それぞれの方の 話しをもっと時間をかけて聴くことができたらどんなにかいいのにと,つくづく感じ ました。
(中山伊佐男 記)
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9月11日の13時半をまわった頃、東武東上線和光市駅に到着。この駅は初めてなので掲示を見ながら出口へ向かう。
「散歩がてら歩いて行きたいところなんだけれど、まさか麻布時間というわけにもいかないしな……」
ぶつぶつと心の中でつぶやいて、タクシーで行くことに。
「理研・研究交流棟まで」
やはり地元のタクシー。スムーズに……。
車は正門から構内へ。理研は、名前は知っていても立ち入るのは初めてで、お上りさんみたいにソワソワ。窓から右を見て、左を見て、また右を見て……、アカデミックだぁ、とちょっと感動。そんなこんなで、研究交流棟入口に車が止まりました。時計を見ると14時にあと少し。
麻布時間にならずに済んだとホッとしたのもつかの間、どうやって入れば……。
すぐに渡辺さんが扉を開けてくれ、ロビーへ。ロビーには中山先生をはじめ皆さんが揃って……、と言いたいところですが、まだ集まるべき人数の半分ていどでした。
麻布OBの集まりは、やっぱり麻布時間になるんだな……。
妙な安心感と同窓意識を覚えた私。来る人を待ちつつロビーで歓談というか雑談。
そして、14時半過ぎ。いよいよ日本有数の研究施設の内部へ。
建物の入口の管理、そして内部への扉の管理……。出入りフリーで不審者でも入れてしまう東大2号館とは大違いだね、と奥脇さんと話しながらちょっとした探検気分です。
セミナー室は、ごく普通のセミナー室でした。当たり前なんですが、正直、ちょっと残念。でも、久しぶりに感じる学問の雰囲気は悪くありません。
そこで、紙コップのお茶を机の上に置いてスタートとなりました。
最初は中山先生。中山先生は、ただ一人、この日の会合で自己紹介の必要がないのでした。そこで国際学会で発表されたときのことや著書のことなどをスライドを交えて。
その後、自己紹介はスライドなどの用意がある人から。
■渡辺さん(77卒):
最初に発見されたプロテインキナーゼはミトコンドリアのカゼインキナーゼ。ヒトゲノムには518個のプロテインキナーゼがある。というお話。
■和田さん(95卒):
眼をつぶった人の右手と左手にわずかな時間差で触れて、どっちが先なのか答えてもらう。右利きの人は、わずかな時間差でもわかるけれど、両腕を交差させるとどっちが先か順序がわからない。というお話。
■奥脇さん(91卒):
ミトコンドリアへのタンパク質輸送をやってました。今は開成の先生。というお話。ちなみに、教育実習で私が教えたときの生徒です。
■菱沼さん(75卒):
東大の酒井研究室で微小管の研究、大沢研究室でリンパ球サブセットと植物レクチン……以下略。一見するとテーマが変わっているようだけれど、後になると、つながりがあって役に立った。というお話。
■野村さん(78卒):
遺伝子でないDNAをやってます、植物のori(複製開始点)はまだ見つかってなくて探してます、家を自分で修理してます、自転車が雑誌に載りました。というお話。ちなみに、教育実習で私を教えた先生です。
■斎藤さん(86卒)
遷移金属触媒イコール環境にやさしい化学をやってます。というお話。帰り道でちょっと話を聞いたんですが、よくわかりませんでした(なので、こんなまとめで良いのか? という突っ込みは無しですよ)。
■丸澤さん(75卒)
製薬会社で研究して、統括して、営業して……。というお話。さすがはビジネスマン。ちゃんとスーツを着ていらっしゃいました。
■藤井さん(84卒)
麻布では剣道部で、生物はあまりやってなくて……。病院の病理診断ではガンかどうかを形態(核の形態)でやってて、自分は、核の異型を引き起こす遺伝子を探してる。というお話。帰り道のお話では、院生時代、駿台で酵素ならぬ講師のアルバイト。どうやら私と入代わりのようで、世間は狭いものです。
■猿渡さん(75卒)
タンパク質は、熱運動で振動ながら機能してます。というお話(タンパク質の構造を示すモデルを計算で動かして見せてくださいました)。
■久保山さん(82卒)
今は、消化器内科で医者をやってます。内視鏡を使ってます。というお話(ごめん、久保山。同期だからって、こんなことしかメモしてなかった)。
■佐野(82卒)
生物は修士まで(安楽研究室)。学士入学で教育学部へ。認知心理学(科学的概念の理解)を始めて、大学院で学問に向かないと悟って止めた。広い意味での異文化コミュニケーション(医者と患者、教師と生徒、専門家と素人など)にこだわってます。という話。
■川島さん(98卒)
細胞増殖因子の取り込みと分解の話をやれと指導教官に言われて、好き勝手やってたら結果が出なくて困ってます。というお話(今回の最年少で大学院生。ほんとに困っている風でした。このつながりが役に立つといいですね)。
休憩後、いよいよセミナーの始まり、始まり……。
■向山さん(88卒)
昔から、動脈と神経が並走していることが知られていたが、なぜなのか、メカニズムが不明だった。それが、発生過程において、未分化な血管網が神経からの誘導で動脈になるため神経のパターンに対応した動脈のパターンができると明らかにした。というお話。
血管内皮細胞で発現する遺伝子のなかに動脈と静脈の標識となるものがあって(これを見つけたのは向山さんが所属するラボ)、それを利用した研究。遺伝子発現で見る限り、毛細血管も動脈タイプ、静脈タイプがあるそうです。
■三品さん(77卒)
前半は、BMP(Bone Morphogen Protein)の受容体の遺伝子を、組織特異的にノックアウトするなどして、原腸陥入直後(中胚葉パターニング)に左右非対称性を形成する上で、BMPが重要(右のアイデンティティに重要)だと明らかにした。というお話。
後半は、アメリカでは、予算獲得のために研究の有用性を訴える際に、「人類のため」ではなく「アメリカ国民のため」と言わなくては駄目。というお話。
アメリカで紹介状というのは一種の証明書。日本的な書き方では駄目で、具体的に書くことが求められるそうです(書いた人に内容に対する責任がある点も、日本との違い)。
活発な質疑を含めたセミナーが終わって、雑談を挟みつつ、今後の相談。事務局は野村さん、次回は来年、スピーカー(二人ていど)をお願いするというあたりが決まり、写真撮影で終了となりました。
そうそう、この麻布生物系OBの集まりがさっそく役立ったようです。
「来日を知った偉い方から、『帰ってきてるならセミナーしろ』と言われてしてきました」と向山さん。
「何で帰国してるって、わかったの?」
「この会合の件のメールで」
だそうです。
その後、可能な人たちは東池袋の洋風居酒屋で懇親会。移動中に、向山さんからは、日経サイエンスに書いた文章(海外で活躍する日本人研究者を紹介するページ)で波紋(?)を広げてしまったことなども聞きました。
居酒屋では、中山先生をはじめ皆さん、気持ちよく酔っぱらって、学園紛争当時の話など……、向山さんは三品さんにアドバイスを求めて内緒話。酔いが進むと三品さんはお疲れなのでしょう眼を閉じてしまい、渡辺さんに起こされる場面も……。
深夜、楽しい1日を終えて解散、エントロピーを増大させました。
佐野芳史('82卒)
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