10月12日(土) 午後12時半より、地下大視聴覚教室でPTA高3学年委員会、学園進路指導部の共催で「大学院への招待」というワークショップが開かれた。これは、現高校3年の保護者で、PTAの役員をされている東大大学院教授の船曳先生の企画で、『麻布高校の生徒にとって、大学についてはある程度知識があるが、かなりの生徒が進学する大学院については、ほとんど知らないのではないか』ということで開催する運びになったものである。会場には高校2、3年生を中心とした生徒たちに、父母も含め約160人が参加した。
まず講師の東京大学・大学院総合文化研究科・文化人類学専攻の教授船曳建夫先生と同・広域科学専攻の助教授尾中篤先生が、文化系大学院、理科系大学院についてそれぞれ大学院とはどういうところか、どのような人たちに開かれているのか、大学院修了後はどういうところへ就職して、研究を続けるのかなどを交互にご自分の経験を含めて話された。また、理科系大学院と文化系大学院との違いにも言及され、興味深いものであった。
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| 理系大学院について話をされる尾中先生 | 文系大学院について話をされる船曳先生 |
尾中先生(先生は、1971年卒の麻布OB)
今年のノーベル物理学賞、化学賞を受賞した小柴、田中氏の対照的な研究(大規模な装置と組織による実験、個人的レベルでの実験)を例に引きつつ、高校・大学でのあらかじめ答えがある実験に対して、大学院の修士課程、博士課程では答えのない実験、研究を行い、答えを見つけるための苦しい努力が必要なことを説明された。ノーベル賞級の発見をするには、研究者の個性、や何とも説明できない「勘」も必要であるとのことである。
さらに、博士研究員(ポスドク)としてフランス、ストラスブールのノーベル化学賞を受賞したばかりの教授の元で研究した経験を詳しく語られた。
理系、特に実験をする分野では、毎日朝9時ぐらいから夜9時10時まで実験室で実験を続けるのが、大学院生の日課であるとのことで、理論の分野では研究室でも自分の家でも研究することができる。
船曳先生
日本では10年ぐらい前までは法学でも経済学でも必ずしも大学院を卒業しなくても、社会に出て専門的な知識が得られそれなりに活躍できるため、学生たちも含め大学院へ行くことにこだわらない風潮があった。ところが、欧米では法学、経済学の専門家といえば、当然大学院に学ぶのは当たり前のことで、ドクターでもないものが、欧米にきて専門的な議論をすること自身、おかしいことで相手にされないという状況があった事から話を始められた。
最近は、東京大学でも法学部の定員を3分の2に減らし、法科大学院(ロースクール)を作ることになり、経済学部でも定員を減らして、経済大学院(ビジネススクール)を作る動きもある。これからは、社会で活躍する人たちは、修士号、博士号は特別のことではなくなるであろう。
また、最近東大でも入ってきた学生が幼い。前は、大学4年生で英文で論文を書く学生が結構いたが、今は4年生でも高校2年生ぐらいの気分で、大学院へ行って初めて専門に目覚める状況だとのことである。
文系の大学院では、理系と違って研究室に出なくても自分で本を読んで、研究することができるが、自分で研究テーマを決めなければならない。ただ、研究者同士の議論が大切で、そうした中から研究のヒントが得られることが多い。船曳先生も人と議論をすることが好きだとのことである。
船曳先生も、尾中先生も大学院へ行くメリットは何かについて、以下の点を上げられた。
(1) 学問は楽しい 自分の好きなことができる。壁にぶつかる事もあるが、それを乗り越えて研究を続ける楽しさ。人間は考えることが楽しいものなのだ。
(2) 学問は儲かる 理系では、日本でも最近、青色ダイオードの開発した人が会社を訴えた事をはじめとして、知的財産権を要求するとが普通になってきたこと。大きな発見をすれば莫大なお金が入ってくるのは欧米では当たり前のことになっている。
文系でも、ロースクール、ビジネススクールを出れば社会で活躍し、お金が儲かる。なによりも、学問をすることによって自分が豊になる。自分が儲かる。
各先生の話のあと、質疑応答があり、生徒、父母から活発な質問があった。大学院生の1日はどういうものか。大学院へはどうやってはいるのか。ポスドクとして欧米の大学の研究室に採用されるにはどうするのか。大学院生も最近は増えすぎて、遊び半分の学生もいるのでは。等々
中には、船曳先生の専門の文化人類学についてかなり本を読んで勉強している生徒もいて、専門的な質問をする生徒もいた。
参加した生徒父母は、和やかな雰囲気の中、皆真剣に話を聞いて、「最近は東大での講義でも、目の前で平気でおしゃべりをする学生が多く、久しぶりに気持ちの良い講義をすることができました」という尾中先生の感想で、幕を閉じた。
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| 会場には高校生、父母等が多数つめかけ、熱心に先生方のお話を聞き、活発に質問をしていた | |
PS :尾中先生は、全国高校化学グランプリの世話人もされていて、「今年は麻布生の参加が少なかったので、来年は是非麻布の生徒もたくさん受けてほしい。優秀者はギリシャで開かれる国際化学オリンピックに派遣されます。」と呼びかけた。化学の好きな麻布生は是非とも挑戦しよう。
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