
1999年9月18日(土)午後、当時日本を訪れていたフランス国民議会議員団(団長 ローラン・ファビウス国民議会議長・元首相 他七名)が麻布学園を訪問し、対話集会が開かれた。この集会は、かねてからファビウス氏の意向を受けて、フランス大使館からの要請があり、これに学園が応じたことにより実現したものである。生徒たちは、議員団訪問が知らされてから、何を議題とするかをめぐって討論を重ね、「ナショナリズムと世界」というタイトルが決定され、有志数名が質問を用意して、当日の集会に臨んだ。
当日は高校生を中心に生徒百三十名以上が集まった。まず根岸校長の簡単な歓迎の辞に続いて、ファビウス氏が挨拶を述べられた。そして生徒達からの質問に答えるという形で、集会は始まった。生徒達の質問は「EU統合を強めていく政策とナショナリズムとの関係はどのようになるのか」、「日本では国旗・国家法案が問題となったが、フランスではどうなのか」、「フランスではモロッコやアルジェリア出身のムスリムが増えているが、かれらとの共存はどのように可能なのか」、「核保有国として日本の非核三原則をどのように考えるか」などであった。
これに対して、ファビウス氏は質問すべてに丁寧に答えてくださった。「私たちは自民族が他民族よりも優れているという感情は放棄する。そのことで、EU統合とナショナリズムは共存しうると思う。」「フランスの国旗・国家はフランス革命のときに、民衆の中から生まれてきた普遍的なものなので、日本とはその起源において違っている。それゆえに日本のような問題は起きていない。」「フランスにおいて、ムスリムであるからという理由で差別されるということはない。しかしもし彼らの中に、市民としての義務を果たさない者がいるのであれば、それは排斥されなくてはいけない。」「フランスは確かに核を持っているが、これは抑止力としてである。日本はアメリカの核の傘の下にあり、そのような選択肢もあると思うが、それゆえに経済的な面でアメリカからの要求が多くなっている。」といった内容であった。
予定の時間を大幅に超過しても、まだまだ時間が足りないという雰囲気であったが、議員団の方々には次の予定もあり、残念ながら生徒の全ての質問には答えられなかった。しかし参加者は知的興奮を味わうとともに、真摯かつ丁寧に質問に答えるファビウス氏に感激した。
最後に、ファビウス氏から根岸校長に記念品が贈呈され、議員団一行は生徒たちに見送られながら校門をあとにした。
